夜  話  
そう言うと皎は、わたしの頬に月長石を切り出して制作されたかのように、内側から光を放っていそうな指をあてました。


ほんの少しヒヤリとする感覚を与えるその指に、わたしの身体はぴくり、と反応します。


「冷たいわ、皎。」


彼の指の上から自分の指をかさねながら、わたしは告げました。


「俺の手を冷たく感じるなら、まだ大丈夫って事だな。」


そんな事を軽い口調で言いながら、皎はわたしの部屋へ入って窓側のソファに腰掛けました。


「お前も座れよ。」


立ったままのわたしを気遣って、皎が言ってくれます。
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