The god of death
さっきも言ったけど、あの猫は寿命だった。
それをアイツも知っていて、最期の場所をあそこに選んだんだ。
俺はあの黒猫の魂を正しく導く為にあの場所へ行った。
それが仕事だから。
「それをあのガキが余計な事…」
『余計って…助けてあげたいって思うのは悪い事じゃないでしょう?』
「お前ら人間だけだ。寿命を引き伸ばしたり、かと思えば他人の寿命を切ったり自ら絶ったり。…だから俺は人が嫌いだ」
『…そんな、』
「おっと。別にここでお前と議論しようなんざしてねえよ。…ほっときゃあのガキは死ぬ一歩手前だった」
あのガキも本当だったらまだまだ寿命は続く。
なのにあそこでガキが死ねばあとの処理がいろいろ面倒なんだ。
だから俺が手を出した。
…元々の仕事は猫の魂を導く事。
ガキを助けた事で猫も助かっちまった。
『…良かったじゃない、生き長らえたなら』
「馬鹿。…仕事は仕事だ。ちゃんとあいつの魂はあるべき所に運んだよ」
『…死んじゃったの?』
「…死を悲しむのは人だけだ」
『そんな事ない!』
「ふん。…猫の体はすぐには処理出来ない。だから俺がしばらくあの中に入っていた」
『…』
「理解出来たか?馬鹿」
『…そんな簡単に…だったら何なの?アナタは何?』
「何…か」
数秒間の沈黙の後、男は言った。
俺か。
… 死 神 。
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