サクラナ

失望

　自分の教室に戻ると池田が待っていた。

　池田は最初のうちはにこにこしていたが、

吉野の沈んだ顔に気がついたのか、すまなそうに、

　「やっぱり、駄目だったのか。
でも、ありがとう。」

　と声をかけた。

　「やっぱり？それはないぜ」

と言いたかったが、

　池田の表情から

彼もかなりがっかりしていることがわかったのでそうも言えず、

笑顔を作って、

　「いやー、参った。彼女は噂以上の性悪女だよ……。」

　と言って事の次第を話した。

　池田は、そいつは酷い、
を繰り返しながら吉野の話を聞いていたが、
次第に自分がとんでもないことを
頼んでしまったことに気付いたのか、

　「変なことを頼んで悪かった。
御免。でも、まあ、彼女の性格が分かっただけでも良かったよ。
ありがとう。お詫びといっちゃなんだが帰りになにか奢るよ」