サクラナ
同級生
 それから、何か月かが過ぎ、
中学生最後のクラス替えの発表があった。
 
 幸運にも、吉野とサクラナは同じD組であった。

 池田は違ったが、弘子も一緒である。

 その時の喜びは第一志望の高校に合格した時の比ではなかった。

 『彼女と仲良くなれるかもしれない。』

 吉野は希望に夢をふくらませた。
 
 だが、吉野とサクラナは一学期の間は話す機会さえなかった。

 席が離れ、班も違ったからである。

 その間、吉野の耳にはサクラナの悪評だけしか入らなかった。

 『口が悪い。』

 『我が強い。』

 『美人を鼻にかけている。』

 『短気。』そんな評判ばかりである。

 もちろん、
その美しさについて異論を唱えるものはいなかったが、
彼女を嫌うものはいても彼女を好きな者がいる
と言った噂はまるでなかった。
それほど、彼女は嫌われていた。

 それでも、彼女が仲間外れにされることはなかった。
むしろ、彼女のまわりをいつも弘子をはじめとした
何人かの女子がとりまいていた。
 
 そこに彼女の不思議な魅力があった。
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