サクラナ
 そんなサクラナと反対に、弘子の人気は高かった。
 
 彼女は美人というより可愛らしい顔をしていた。

 ショートヘアーに、真ん丸顔、大きな瞳、
やや上を向いた鼻に、
小さめの受け口がバランスよく配置されていて、
一見するとすごく可愛いかった。

 それに明るくて、上品な雰囲気も漂わせていた。
 だから、下町育ちの生徒が多い吉野のクラスメイトのなかでは
彼女はとても垢抜けて見えたのである。

 実際、彼女は保守系の衆議院議員の三女で、
どうして公立の中学校に入ったのか不思議なくらいであった。

 この点、彼女の弁によると、
父親がスパルタ思想の持ち主で
たくましく育てるために公立中に入れたと言うことであったが、

 私立中の入試に落ちたという噂もあり、
真偽のほどは定かでなかった。

 そんな弘子であったが、
 吉野は彼女のことはあまり好きではなかった。

 好みの顔でなかったこともあったが、
彼女のでしゃばりで見栄っ張りなところが
いやだったからだ。
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