サクラナ
 そうするうちに、
入試シーズンも終わり、
 吉野をはじめとする六人のメンバーの進学先が決まった。

 吉野は某私立大学の付属高校に、
 サクラナと康夫は中堅の都立高校に、
 弘子と好美は同じ私立の女子高校に、
 健児は都立の商業高校に、決まった。

 ランクこそ違ったが、
それぞれ第一希望の高校だった。

 あとは卒業を待つのみである。
 
 卒業式を前に、
 クラス全員で日帰りで旅行することになった。

 場所は某遊園地である。

 吉野は本当ならサクラナと
一緒に行けるので嬉しい筈であるが、
その旅行だけは気がすすまなかった。

 理由は簡単なことだ。
 予定では、そこで一時間程スケートを
することになっていたが、

 吉野は一度もスケートをしたことがなく、
そのため、ぶざまに転ぶことは目に見えていて、
そんな姿をサクラナに見せたくなかったからだ。

 しかし、一人だけ行かないわけにもいかず、
いやいやながらも吉野は旅行に出かけた。
 バスの車内では、
 みなおしゃべりなどをして楽しんだが、
吉野は今一つ気分がのらなかった。
 
< 33 / 89 >

この作品をシェア

pagetop