サクラナ
現実
 「吉野くん、聞いているの?」

 吉野は弘子の声を聞いて我に返った。

 弘子は腕の時計を見た。

 「いけない、もうこんな時間。」

 弘子とシーバルに来てから一時間半が過ぎていた。

 「出ようか。ここは俺が出す。」

 吉野はそういうと伝票を掴み席を立った。

 吉野たちはシーバルを出ると駅に向かった。

 吉野はサクラナの消息を聞きたい
と思っていたがなかなかそのきっかけが掴めない。

 サクラナにこだわっているだけに
聞きにくかったのである。

 『ここで聞かないとサクラナの消息を知る機会が
なくなるかもしれない。』

 吉野はそう思うと、
 
 「ねえ、そういえばサクラナどうしてる?」
 
 吉野は急に閃いたかのようなふりをして弘子に尋ねた。
 
 弘子は吉野の顔をじっと見つめながら、

吉野の質問には答えず、

 「会いたいの?」

 と逆に吉野に尋ねた。

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