サクラナ
 スケート場では
吉野を除いた4人がそれぞれペアを組んで滑った。

 残された吉野はさっそうと
滑る4人を横目で見ながら手摺のそばで
一人寂しく滑っていた。

 4人は吉野のそばを通る度に
吉野に何かしら声をかけたが立ち止まって
吉野にスケートを教えようとするものはいなかった。

 サクラナとて例外ではなかった。

 そのうち吉野はいじけてしまい、
スケートをやめて近くのベンチに腰をおろした。

 しばらくすると、健児が、

 「吉野どうした?気分でも悪いのか?」

 と吉野の様子を尋ねに来た。
吉野はどこも悪くはなかったが、

 「ちょっと頭が痛くてね。」

 と嘘をついた。

 「我慢できるか?」

 「ああ、大丈夫。少し休めば直ぐ良くなるよ。」

 しばらくすると、今度は弘子が様子をうかがいにきた。
 「頭が痛いの?
大丈夫?医務室に行って薬貰ってきてあげましょうか?」

 「ありがとう。大丈夫だよ。さっきより痛みが和らいできたよ。」

 「そう。じゃあ、何かあったら呼んでね。」

 吉野は自分が情けなかった。
と同時に寂しかった。

 しかし、
そんな吉野とは反対にサクラナは健児と楽しそうに滑っていた。
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