サクラナ
 「ねえ、あんた、これからひま?
あたし見たい映画があるのよ。
ひまだったら付き合ってよ。」

 吉野は内心嬉しかったが、
わざと考えるふりをした。

サクラナは焦れったそうに、

 「いやならあたし一人で行くけど」

 「わかった。付き合えばいいんだろ」
 二人は○○駅から山手線に乗り△△へ行った。
 その間、
吉野はサクラナに何の映画を見るのかを尋ねたが、

 サクラナは、

 「着いてからのお楽しみ。」

 と言うのみで教えてくれなかった。

 このとき、
 吉野は当時話題のラブ・ストーリーでも
見るに違いないと思い込んでいた。

 しかし、サクラナの見たがっていた映画は違った。
 もちろん、ホラー映画ではなかった。

 なんと彼女が見たがっていたのはアクション映画だった。

 吉野はアクション映画は大好きだった。

 特に、当時の人気スター*******の大ファンで、
休み時間などは友人とその真似をして遊んだものだった。

 しかし、好きな女の子と見るような映画ではないと思っていた。

 アクション映画ではムードがでないからである。

 サクラナは何を考えているんだ、とも思った。

 だが、映画が始まると
吉野は夢中になってその映画を見てしまった。

 サクラナがいることも忘れてしまった。
 映画館を出ると、
 道すがら吉野は
今見たばかりの映画のハイライトシーンを語った。

 さっきまでの沈黙が嘘のように吉野は良く喋った。

 吉野は調子に乗ると良く喋る傾向がある。

 その日もそうだった。

 映画館から△△駅までは徒歩で5分くらいだったので

すぐ駅に着いてしまった。
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