サクラナ
 吉野はもっと話をしたかった。
それに御腹も空いていた。

 そこで、

 「ねえ、御腹すかない?この辺で何か食べていこうよ。」

 と言った。

 「うん、あたしもそう思っていた。
ねえ、**デパートのレストランに行かない?
あたし、そこに行きたい。」

 「じゃあ、そうしよう。」

 デパートのレストランに着くと、
サクラナは、最初から食べるものを決めていたように、
 メニューも見ないで、こう言った。

 「あたし、海老フライ定食にする。あんたは?」

 「じゃあ、おれも。」

 サクラナは注文が終わると懐かしそうに話し出した。

 「あたし、父さんが生きている頃、
日曜日になると、よく家族みんなでここに来たの。
 初めのころはあたしも小さかったから、
お子様ランチばっかり食べていたんだけど、
4年生の頃かな。
 父さんと母さんが
よく食べている海老フライ定食が食べてみたくなって、
父さんに頼んで貰ったの。
 そうしたらおいしくて。
それからはここに来ると
いつも海老フライを頼むようになったの。
 でも、5年生のとき、急に父さん死んじゃったから。
それから、一度も来てないの。」

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