サクラナ
 その後、二人は少しの休憩をはさんで、
また歩き始めた。

 取り止めもない話しをしながら、
二人はゆっくりと歩いた。

 そして、2時間程すると***湖を一周し、
最初来た場所に着いた。
 帰りのバスの中では
二人はほとんど口を聞かなかった。

 別に仲が悪くなったわけではなかった。

 また、話しに飽きたからでもない。

 話しをしないでもいられただけである。

 電車の中では、
5時に起きて疲れていたためであろうか
サクラナはいつの間にか眠り込んでしまった。

 吉野はサクラナの寝顔を覗きこんだ。
無邪気な寝顔である。

 近くでよく見ると、
口の上の辺りには薄く短い産毛が生えていた。

『まだ、子供だな。』

そう思いながらも、
サクラナがとても可愛く感じられた。
 そのうち、サクラナは吉野の左肩に頭を乗せてきた。
 
 吉野は悪い気はしなかった。

 なんとなくサクラナに頼りにされているようで嬉しく思った。

 「吉野くん、次よ、起きて。」

 吉野は何時の間にか眠っていた。
 気がつくと、
 自分の方がサクラナの右肩に頭を乗せているのがわかった。

 吉野ははっとして、
サクラナに尋ねた。

 「御免、寝ちゃった。あれ、もう着いたの?」

 「あたしも今起きてびっくりしたの。」

 **駅に着いた。
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