サクラナ
 当時の吉野としては、

あれがなにかの間違いなら……、

彼女が自分のことを本当に好きならば……、

彼女の方から連絡がくるに違いない……、

と思う他なかった。

 しかし、一週間してもサクラナから連絡はなかった。

 元来せっかちな吉野はこのとき
--サクラナに裏切られたものと--確信してしまった。

 そこで、やけになった吉野は再び、
好美をデートに誘うことにした。

 吉野は好美を○○園へ連れていった。
 
 吉野は彼女と精一杯楽しく過ごすことで
サクラナを忘れようとした。

 そのため、某遊園地に着くと
吉野はできるだけ楽しそうにふるまった。

 実際、好美の方は至極楽しそうであった。

 しかし……、
 
 吉野は内心好美のそんな顔を見るのがつらかった。

 と同時に好美を利用している自分が情なく思えた。

 だが……、吉野にはこうすることしかできなかった。
 
 吉野はその後も好美と交際を続けた。
 デートを重ねることでサクラナを忘れ、
好美を本当に愛そうと努力したわけである。

 しかし、吉野は依然サクラナへの未練があった。

 好美との交際を続けながらも、

 やはり心のどこかでは
サクラナから連絡があることを待っていたのである。

 しかし、サクラナからの連絡は無かった。
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