サクラナ
不安と再会の決意
 『サクラナが昔のように……。
そんなはずはない。

 それなら、弘子があんなことをいうはずはない。

 でも……。もし、彼女が落ちる所まで落ちているとしたら、 

 果たして、彼女は友人の弘子に居場所を教えるだろうか?

 普通なら、自分の惨めな姿を友人には見せたくない
と思うのではないか?

 特に、弘子に対しては……。

 サクラナは弘子と仲は良かったが、

 彼女にはライバル意識があったはずだ。

 弘子はサクラナと違い経済的に恵まれ過ぎていたから、

 そういう弘子には負けたくない
という意識があったに違いない。

 だから、サクラナは、弘子のようには迎合しないで、

 他人に嫌われるのを承知で
ああも我を通したのではないのか?

 サクラナはそういう女だ。

 だとしたら、
 決して、弘子にだけは自分の惨めな姿を
晒すようなことはしないはずだ。』

 吉野は考え込んだ。

 『それじゃ、今、サクラナはどうしているというんだ?
 人並みに結婚して幸せに暮らしているとでもいうのか?
 違う。

 それなら、弘子がそのことを話題にしたはずだ。
 それに、会わないほうがいいなんて、
 弘子がそんなことを言う必要はない。

 じゃあ、
 何故、彼女はあんなことを言ったんだ?わからない……。』
 吉野はしばらく頭を抱え込んでいたが、

 『こんなことをしてても何も解決しない。
 とにかく、彼女に会おう。

 会ってこの目で彼女を見るんだ。
 考えるのはそれからでも遅くはない。』

と決心した。
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