サクラナ
 吉野はそんな由美の言葉に、

 「ひどいこというな。」
 「まあ、怒らないで聞いてよ。
 それで、私たち食事を終えたけど、
 まだ別れるには時間が
少し早かったのよね。

 だから、
 私

 『買い物でもしたい』

って言ったの。
 
 本当なら、
 最初のデートだから飲みに行くとか、
 まあ、せいぜいどっかでお茶を飲むのが普通だけどね。

 だけど、
 私その時なぜか買い物したかったの。

 だから、いやな顔されてもいい
と思って正直にそう言ったのよ。

 そしたら、あなた、腕時計を見て、

 『まだ、この辺の店はやってるな。
なに買うの?』

と言って

 黙って私の買い物に付き合ってくれたの。

 そして、
 私の服も選んでくれたのよ。

 だから、
 荷物になるくらいたくさん買い物しちゃったわ。

 おまけに、
 ちゃんとしたブランドの路面店で値切ろうとしたのよ。

 私、あの時は恥ずかしかったわ。

 でも、悪い気はしなかったわ」
 
 由美は懐かしそうに話した。
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