サクラナ
現実と夢
 僕は、吉野とは違う。

 打算的な結婚なんてできない。

 結婚する以上は本当に好きな人
と結婚したい。

 そう思っていた。

 そして……。

 僕が本当に愛したのは、

 
 サクラナだけだ。

 
 でも、サクラナはどこかに行ってしまった。

 だから、30近くになっても僕は独身でいた。

 そんな僕が、

 ある日、
サクラナをモデルにした小説を書くことを決意した。

 僕は、
仕事の合間を利用しては少しずつ小説を書いた。

 最初はかなり手間取った。

 でも、書き始めて一週間もすると
スムーズに筆が運ぶようになった。

 この調子なら、
年内には完成できると思っていた。

 そんなとき……。
 忘れもしない、

 ××**年7月1日!
 

 その日の午後、

 僕は□□の駅から○○線に乗り込んだ。

 土曜日の昼間のためか、
車内はがらがらだった。

 でも、僕は恰好をつけて、
座席には座らないでドアのそばで突っ立っていた。

 しばらくして、
 ふと右の方をみると、
一つ先のドアのそばで同じ様に立っている人間がいた。

 20代前半くらいのすらりとした小柄な女で、
目鼻立ちの整った美人だ。

 最初、

 僕は

 『いい女だな。』

と思ったくらいで、

たいして気にもとめなかった。

 でも、
 
 彼女がしきりにこちらに視線を投げかけるので、

 僕は彼女のことが気になりだした。

 そのうち、

 僕はその顔に見覚えがあるような気がしてきた。
 
 そこで、

僕はその女の顔を凝視した。

 彼女も同じことを考えたのか

こちらをじっと見た。

 刺すような鋭い視線で。

 僕らは数秒間見つめあった。

 この瞬間、

 僕は15年前のあのときを思い出した。


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