サクラナ
 喫茶店につくと、

 彼女は、

 「弘君、今、何してんの?」
 
 と言って、
僕の近況を尋ねてきた。

 「今、公務員してんだ。」
 
「えーっ。信じられない。

悪ガキで有名だったあの弘君が公務員?

どこの役所が雇ったの?」

 「警視庁。」

 「嘘でしょ。」
 「本当だよ。

といっても、
刑事ではなく事務職だけどね。
おれはずっと前に更生したんだ。」

 「へえー、驚いた。
でも、よかったわね」

 「おまえは何やってんの。」

 「あたしはたんなるO・Lだけど。」

 「どこ」

 「○○○」

 「すごいじゃん!で、なにやってんの。」

 「えっ、たいしたことやってないの。案内係」

 「えっ!グランドホステス!
 それこそ、
嘘だろ。

あんなに口の聞き方が悪かったのに。
………でございます、
なんていっているの?笑っちゃうよ。」

 「本当。お互いずいぶんと変わったもんね。」

 僕らはこうして今までの自分たちの軌跡を語り合った。

 彼女は高校1年のとき母親をクモ膜下出血で亡くし、

その後、
妹共々亡父の妹に引き取られたという。

 だが、幸いなことに、
叔母夫婦は人柄が良いうえに、
子供がなく、

しかも、比較的裕福だったため、
サクラナたち姉妹を
自分の子のようにかわいがってくれたという。

 そして、
 サクラナは人並みに短大をでて、
 某一流航空会社に就職したそうだ。

 彼女は僕が思っていたほど
苦労しなかったわけだ。

< 87 / 89 >

この作品をシェア

pagetop