BLACK 〜それでも君に出会った〜
しばらく浩司君の瞳を食い入るように見つめていた。

すると、浩司君の顔が、突然明るくなった‥。

笑っていたんだ‥。

『良かったね。』

「えっ!?」

『結生ちゃんを、そこまで傷つける事が出来るほど‥大切なモノに出会えて。
人間は、大切なモノであるほど、傷を受けるんだよ。
‥傷ついても、そんなモノに出会えた結生ちゃんは、不幸なはずはないよ。』

あたしは、嬉しいとは思わなかった。

悲しいとも、
苦しいとも…
分かってもらえたとも思わなかった。

ただ、体中が泣き叫ぶ程に悲鳴を上げていた。

その言葉は、
あたしの心に痛い程響いて、
全身全霊で、理解しようとしていたんだ‥

込み上げる涙を飲み込んで‥
あたしは‥
笑った‥

あたしは、傷ついたけど‥
逃げたけど
辛かったけど‥。

スケートに
仲間に、
夢に出会えて嬉しかった。

幻だからこそ
輝くほどにキレイに見えてしまうけど、

灰色の今を、
あたしは生きていこう‥。
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