幼馴染みが担任になったら【番外編】
「ポテト、食べないの?」
「……食べるし」
「んじゃ、早く食べなよ。冷めたらマズイじゃん」
やっとありつけた夕ご飯、ファーストフード店の2階席で、ハンバーガーを持ったままぼんやりしてたあたしのポテトに、そう言いながらも何食わぬ顔して手を突っ込んでいる瑞穂。
よくよく見ると、自分の分はすっかり完食してしまっている。
あたしはその手を払い退ける気力もなく、瑞穂の口に吸い寄せられるように入っていく自分のポテトを眺めながら、さっきから抱いていた疑問を口にした。
「あのさ……なんで……あそこなの?」
あたしは、ここに着くまでも強引に瑞穂に引っ張られてきた。
まあ、あたしがあんな場所で叫んでしまったからなんだけど……
そしてアワアワしながらも、何気に辺りを観察してきてしまった。
そこで、予想に反して綺麗でお洒落な外観をしたラブホ群に、ちょっと度肝を抜かれながら。
だから一応、ラブホに行く女の子達の気持ちも、なんとなくは理解したつもりなんだけど……
「“そんなバナナ”って、ネーミング寒くない?」
しかも外には作り物のバナナの木があったんだよ?
バナナにかぶりつくメス(多分)猿まで居たんだよ?
ぶっちゃけあたしの中では……ダントツ最下位だったんですけど?
「あそこが、瑞穂のお気に入りなの?」
怒られるのを覚悟で、あたしは目を反らしながら呟いた。
だけど、瑞穂の反応は、意外にも温和なものだった。
「あー…確かに寒いよね、アレは……」
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