幼馴染みが担任になったら【番外編】





「あっ 瑞穂聞いてよ!」





早くもドリアを完食した美奈が言う。





こういう前フリの時って、大体あたしの失敗談が出てくるんだけども……





「楓ったらね…」





ほらやっぱり。





「なになに?この子また何かやっちゃった?」





あたし達が来た時にはすでに食べ終えていた瑞穂は、見ていたスケジュール帳から顔を上げた。





その目がやけに輝いているところがムカつく。





「さっき実習でみかん缶作ったんだけどね、砂糖と塩、間違えそうになったんだよ!
みかんの塩漬け作る気かって!」



「ええっ!? それひっど〜い!!」





途端にゲラゲラ笑う瑞穂の声が辺りいっぱいに響く。





さすが歌手志望!




って感心してる場合じゃない。





注目を浴びつつある瑞穂の気を逸らすため、慌ててバッグからみかん缶を取り出してテーブルに置いた。





「コレ、プレゼント!食べ頃は1ヶ月後だから!」



「え……ああ、うん……
ありがと。凄いね、缶詰も作るんだ……」





笑うのをぴたりと止め、代わりにパッケージもされてない、ただのスチール缶を興味深げに眺める瑞穂。





その横で、





「コレは花音ちゃんに」





美奈が膨らんだバッグからみかん缶を取り出すと、いいよいいよと、花音ちゃんは恐縮したように首を振った。





「っていうか、志保がいらないって言うから、あたし、6コもあるんだ。
だからこの可哀相なバッグの為にも1コ貰ってやってよ」



「ええっと……ありがとう……」





いびつに膨らんだバッグを持ち上げながら苦笑いする美奈から、花音ちゃんはようやくスチール缶を受け取った。





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