幼馴染みが担任になったら【番外編】





“麻美”と聞いて思い浮かぶのは、ただ一人。






『はじめまして。耀太と同じゼミの近藤 麻美です』



『この子がいつも耀太が話してた子ね?妹みたいで可愛いって』






あの花火の日に一度だけ会った、忘れたくても忘れられない女(ひと)。





あたしから耀太を、ううん、耀太への恋心を奪った女(ひと)。






「耀太がまさか教師になるとは思わなかったわ」



「だな、俺も今だに信じらんねぇ時があるし」






だんだん会話が弾んでいく2人は、まだあたしの存在に気づいていない。





そしてあたしも、その人が本当に麻美さんなのかを確かめていない。






一瞬、麻美さんに連れられて行くあの時の耀太の後ろ姿がフラッシュバックしてきて、顔が強張った。






ううん、今は違う、違うんだから……






すぐにその残像を頭から振り払って、まだ緊張で震える下唇をキュッと噛み締めながら、あたしは少しだけ体を横にずらした。





………っ…!?





その瞬間目に映ったのは、





「……? あらっ、……アナタは……」






あの頃よりもさらに綺麗になった麻美さんの驚いた顔で。






「……こ、こんばんは…」





体中から血の気が引いていくのを感じながら、無理矢理絞り出した声で、あたしは小さく頭を下げた。







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