幼馴染みが担任になったら【番外編】





トラウマって怖いと思った。
並んで立つ2人が、あたしにはもう、あの時の2人にしか見えなくなった。




隣同士がよく似合ってる2人にしか−−−





「………たのか?」






ヤだ……、当たり前のように耀太の横に並ばないで……






「………楓?」






そんな風に“困った子ね”って顔でこっちを見ないで……





「おい、楓」






麻美さんばかりに気を取られていたあたしを、心配そうに耀太が覗き込んでいるのことに、その時初めて気が付いた。







「……えっ…」



「どうしたんだよ?ぼーっとして」



「あ、ごめっ…」



「で、忘れ物はちゃんとあったのか?」



「……うん、あった…」



「そっか… よかったな」





ゆっくりと安堵の表情を浮かべた耀太の手が、そう言っていつものようにあたしの頭をくしゃっとひと撫でする。






でもその手が、今は手のかかる子供を気遣う大人のモノのように感じて……





なんか…ヤだ…よ……





あたしは咄嗟に視線を反らしてしまった。






すると、それまで微笑みをたたえながら黙ってあたし達のやり取りを見ていた麻美さんの口が、おもむろに開かれた。







「クスッ…、名前を聞いて思い出したわ。アナタ、耀太の妹ちゃんの楓ちゃんね?」






……いもう…と…?



ズキン−−−






自分の胸の傷が、また大きくえぐられた気がした。






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