幼馴染みが担任になったら【番外編】
その瞬間−−−
「楓!」
「楓ちゃん!?」
慌てた2人の声が聞こえて、あたしの体が優しく包み込まれた。
「冗談だよ……大丈夫だから泣くなよ……」
心配する耀太の声が、すぐそばで聞こえる。
「ごめんなさい、今のは耀太をからかうつもりで言ったのよ。
楓ちゃんを傷付けようとしたわけじゃないの……
ホントに、ごめんね……」
申し訳なさそうな麻美さんの声も。
だけど一度溢れてきた涙は止めようもなくて、あたしは耀太の胸でひとしきり泣いてしまった。
その間、麻美さんはあたしの頭を優しく撫でながら、こんな話をしてくれた。
大学時代、“妹みたいな楓”の話ばかりして誰とも付き合わない耀太に、密かにシスコン疑惑があったこと。
それが花火大会であたしに会ってからは、なぜかロリコン疑惑に変わってしまったこと。
「ごめんね、耀太を見るとついそのネタでからかいたくなるのよ。
悪い癖よね……反省してるわ」
「ホント、いい迷惑だ。
俺と楓はたった5歳しか変わんねぇっつうの」
「だからごめんってばぁ」
『たった5歳』
その言葉が嬉しくて、あたしは押し付けていた顔を少しだけ上げた。
「……あの…」
「ん?」
「2人は……付き合ってたんじゃ…」
「「違う!!」」
同時に顔をしかめて反論する2人。
一瞬呆気にとられながらも、あたしはなんだか可笑しくなってプッと噴き出してしまった。
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