幼馴染みが担任になったら【番外編】
「俺はそんなに鬼じゃねぇし……」
「……ホ、ホント…?」
恐る恐るあたしが尋ねると、あたしの乱れた前髪を直しながら、耀太はクスッと笑った。
「ホント。今のはほんの仕返し」
「なにそれ……」
「だって今日一日、楓にいっぱい翻弄されたから」
そう言うと、今度はあたしの鼻を指先でピンと弾いた。
「いたっ…! ちょっとぉ、それを言うならあたしだっていっぱい耀太に翻弄されたんですけど?」
弾かれた鼻を押さえつつ、耀太をジロッと睨む。
「例えば?」
「待ち合わせに遅れて心配させられるは、耀太を好きな子に会ってヤキモチ妬かされるは、極め付けは永遠のライバルに鉢合わせさせられるし……」
「ライバル……?」
−−−はっ!
「な、なんでもないっ」
格が違い過ぎる麻美さんをライバル視してたなんて、死んでも言えないよっ!
「とにかく、今日はあたしも色々大変だったのっ」
「……ふ〜ん」
なんだか腑に落ちないって顔されてるけど、あたしは無視を決め込んだ。
やがて耀太は、「ま、いっか……」と呟きながら、あたしの体を柔らかく腕で包み込むと、静かに目を閉じた。
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