バツゲームな彼女
白川さんは少し間をおいてから話し始めた。

実は私ね、前におじいちゃんとここに来たことがあるの。
私がまだ幼稚園のときなんだけと゛、おじいちゃんがここのオムライスが美味しいからって私を連れて来たの。
でも私は遊園地に行きたかったのにおじいちゃんはそんなことおかまいなしでオムライスを注文するもんだから私意地になっちゃって、オムライスを一口も食べなかったの。
 その後もおじいちゃんは遊園地に連れてってくれずにこの近くの公園に連れていかれて、池の周りを歩かされたの。
私はおじいちゃんが何を考えてるのかわからなかったから

「おじいちゃんなんか
大嫌い。」

そういって泣き出してしまったの。
おじいちゃんはそれでやっと私を遊園地に連れてってくれた。

「ごめんよ。唯はこっちのほうが好きやな。」

今思うとその時のおじいちゃんなんだか残念そうな顔をしてるように見えた。
その三日後にね、おじいちゃん死んじゃったんだ。ずっと心臓病を持っていたんだって。
その後で母さんに聞いたんだけど、その公園はずっと前に亡くなったおばあちゃんとの思い出の場所だったんだって。

「ばあさんと見たあの景色を唯にも見せてやりたい。」

おじいちゃん私と出かける前に母さんにそう言ってたそうなの。
なんだか私おじいちゃんに悪い事したなって思って、そのあと母さんと公園に行ったんだけど何がおじいちゃんの見せたかったものなのかわからなかった。
その帰りに食べたのがここのオムライスなの。
とっても美味しかった。
私が唯一おじいちゃんに教えてもらえたのがここの美味しいオムライスなの。

 だからここのオムライスは絶対おいしいよ。

白川さんは話し終えると涙を拭き取るように目をこすり笑ってみせた。

それからすぐにオムライスが出来上がった。
出てきたのはやわらかそうな卵ののった普通のオムライスだった。

 彼女はそのオムライスをどこか遠くを見るような目をして食べていた、、、
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