恋は平行線上一方通行
◇久遠

今日も朝からやたら五月蠅い女たちが湧く。

「うぜえ、散れ」

低い声で言えば、蜘蛛の子を散らすように奴らは逃げて行った。

「―あ。」

けれど、桜の中、2人の女が残っていた。
同じ学年の春日部蒼衣と高岡絵李奈、―だったと思う。
確かコイツらはオレにたかるウザイ奴らとは違う。

オレ、久遠龍也。
自慢じゃないケド、大手貿易会社社長の息子。
特技はサッカー。

春日部と高岡が歩きだす。

「おはよ、久遠」
「…おはよう」

2人が声をかけてくる。

「おはよう」

何となくオレも返してみる。

すると、高岡はニヤリと笑った。
―コワイ。

「久遠さぁ、もーちょっと優しく追い払いなよ」

そっちかい。

「―…まぁな」

苦笑い。
少し愛想悪いかな、と自嘲する。

「あ、もうチャイム鳴るよ」

春日部が時計を見て呟く。

「そーだね、んじゃ久遠、先、行くよ」
「久遠クンも急ぎなよ」

2人は走っていく。
…若干、春日部がつっけんどんなのが気に掛かる。

でも、
オレも、ゆっくりとその後を追ったのだった。
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