王国ファンタジア【戦場の民】

「エークさーん!お弁当できましたよー!!」


 下の階から声が聞こえる。宿屋の奥さんの声だ。

 それを聞いて、キルテとエークは立ち上がる。もちろん、出発のために手荷物を持って。


「「待って!!」」

 大きな声で呼び止める少女たち。二人はポケットから何かを取り出すと、一方はエークの所へ、もう一方はキルテの所へ歩み寄る。

「これ貸してあげる」

 エークは少女に手を引っ張られ、その何かを受け取る。

――…それは拳に収まる程の、可愛らしい小さな兎の人形だった。


「それ、セツカたちの大切なお守りなの。だからちゃんと返しに来てね?絶対だよ!!」

「銀色のお兄ちゃんにはセツナの貸したげるね♪」

 キルテも受け取った小さな人形。…キルテはその人形をコートのポケットに入れると、そのまま少女の頭をぽんっと叩いた。


「…わかった」

 そう呟くように言うとキルテは、さっさと部屋を出て行った。


「じゃあ俺も行こうかな」

 キルテに続いて部屋を出ようとするエーク。

「「私達、お見送りするよ!!」」

 エークは少女たちにありがとうとお礼を言い、少女たちと共に部屋を後にした。
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