王国ファンタジア【戦場の民】



「――…調子、戻ったみたいだな」

 町を出発したキルテはエークに言った。後ろからはまだ、少女たちの声が聴こえる。

「まあ…な。まだ本調子までにはなっていないけれど」

 キルテの方を向くことはなく、歩きながらにエークは答えた。


 二人は黙って歩き続ける。
少女たちの声はもう聞こえない。


「そうだ」

 何かを思い出したようにエークは言った。

「ん?」

 キルテはエークの方を見る。

「折角だし、王国まで飛んで行こうか」

 エークもキルテの方を見る。

「はぁ?まだ本調子じゃねぇんだろ?危険なんじゃ…」

「あれ?キルテはそんなに臆病だったっけ?」

「ハァ?!上等だ!!乗ってやるよ!この野郎!!」

 エークはくすくすと笑うと、コートの胸ポケットから手帳を取り出して、文字を書き出した。


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