欠陥主義者
「そうね、例えばミロのヴィーナス」

聞いたことのある作品に少しだけ話を身近に感じた私はメニュー表を元に戻す。

「多くの人があの両腕の先を考えているわ」

聞いてくれる、と思ったのか、スプーンをソーサーの上に置き、身を乗り出すように肘をついた彼女。

「林檎を持っていた、なんて話はよく聞くわね」

「えぇ」

聞いたことないけれど、早く先を聞きたいのでそういうことにしておく。

「じゃあ、あなたにきくわ。なぜあの失われた両腕の先を考えるのか」

突然の質問に戸惑う。

やはり、気になるからだろう。
でもなぜ気になるのか。

「そこに、魅力を感じるからよ」

魅力を……。



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