my catty girl~もし私がネコになっても~
学は雑然とした部屋のベッド近くに置かれたバッグから、銀色のリボンが結んであるピンクの袋を取り出し、私の目の前にポン、と差し出した。
「プレゼントも…渡せないなんて俺、サイテーだな」
学の本心を知る度に反省が積もっていく。もしも許されるなら、今すぐ…
最低なんかじゃないよ
そう伝えたい。伝えたいのに、こんな近くで、目の前にいるのに。
私にとってそれが学でも、彼にとって私は「仁科春乃」じゃないんだ…。
「開けてごらん」
袋の端を手で押さえ、リボンを口で噛んで引っ張った。
「キミにあげるよ」
そう言って学が袋からプレゼントを取り出してくれた。
赤いリボン―。
「ホントはピンクのリボンだったんだ」
…え?
「昨日になってあいつ、お気に入りの赤いやつダメにしちゃったって言うから…」
…
「買いなおしてたら待ち合わせの時間にまで遅…れて…」
ぽつぽつと床を打つ涙はひとつじゃなかった。学も私も泣いていたから。
「気に入ってくれた?」
きれぎれの笑顔に私は必死で頷いた。
すると学の手が体にのびてきて、優しくひざの上におろすと、首に赤いリボンを結んでくれた。
「メリークリスマス、ハルノ」
そう言って、ぎゅっと抱きしめてくれた。もちろん彼は私をただのネコとしか思っていないけれど…
「おまえのこと心配だけど、俺これから夜までバイトなんだ」
やっぱり…バイトだったんだ。よかった…。
「そのあと後輩と約束あるけど、早めに帰るよ。」
…
麻美ちゃんと会う約束してたのは本当だったんだ…
学は用意ができると、出掛けていった。
私を置いて
行ってしまった―。