アタシの弟。
途中まで瑠唯が送ってくれたから、あと5分ぐらいで着く距離。
まず遅刻は免れたから、瑠唯には感謝かな。
「あれ?
あの方、雅様じゃありませんか?」
「ん?
あっ、雅だよ!」
後ろから、そんな会話が聞こえて振り向いた。
「椿ちゃん…に、美咲」
駆け寄ってきた、小柄な黒髪が似合うおとなしそうな女の子が椿ちゃん。
西園寺椿ちゃん。
おしとやかなお嬢様。
椿ちゃんの隣にいるのが、田原美咲。
恋愛に興味津々なイマドキ女子高生。
「見たよ~!
ね、椿ちゃん」
「うん、見ましたよ!
雅様もやりますね~!」
「…はぁ?見たって、何を?」
「またまたとぼけて~!」
美咲はあたしの脇腹を肘でツンツンしてくる。
見たって何を?
「私たち、瑠唯様の背中に雅様が抱きつきながら自転車で登校なさるのを見たんですよ」
ニコニコ笑いながら笑顔で話す椿ちゃん………。
見られた…って、この2人に!?
「いやっ…!
ごっ…誤解してない………?」
「してないよ。
やっと雅の想いが実ったってことでしょ~?」