シルバーブラッド 眠らぬ夜に
 

その牧野も、今日は収穫なしで引き上げてきた。

「今日の相手は気に入らなかったのか」

「ああ」

 真っ暗な道を帰りながら、話していた。

 気に入らなかったら、相手に不快な思いをさせずに切り上げる。

牧野はそういう才能にも長けていた。

「だいたい、化粧落としたら誰か分からないようなのは、嫌いなんだ」

 浩之は驚いた。

そういう子ばかり選んでいるものだと思っていたから。

「よく言う。

そういう子といつも仲良くなってるじゃないか」

「そうだけど。

オレはああいう脅威の厚化粧の向こうの素顔をちゃんと見てるんだ。

それで可愛い子だったら、その際厚化粧には目をつぶる」


< 102 / 241 >

この作品をシェア

pagetop