シルバーブラッド 眠らぬ夜に
浩之がどういう人間かわかったら、誰もそんなこと思わないだろう。


駅ビルの明かりの中に飲み込まれて行きながら、二人はしばらく無言だった。

改札を抜け、別々の方向へ歩きかけながら、

「薫先輩、彼氏と喧嘩中だよ。

彼氏の浮気がばれたらしい」
 
牧野は背中を向けたまま言って、浩之に手を振って見せた。
 
浮気?
 
薫先輩のために、怒りがこみ上げてくるのが分かった。
 
そんな状態でも、薫先輩は、いつも通り振舞っていた。

そういう人だ。
 
でもだからって、自分に何が出来るんだろう。
 
悔しいけれど、何にも知らないフリをすることしか出来ない。
 
浩之は頭の中から薫先輩を追い出した。



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