シルバーブラッド 眠らぬ夜に
その男に、コートの下の、シャツの襟をしっかりとつかまれて、押さえつけられていた。

浩之はその状況をやっと把握した。

このまま、やられていたんじゃまずいな。

思うのに、壁から引き剥がされて、頭を壁に叩きつけられた。

 一瞬、意識が途切れた。

浩之は壁に背中を這わせながらずるずると地面に座り込んだ。

「切山浩之だな。」

 野太い声が言うのが聞こえて、頭の中にとばりを下ろしていたものが、さっと引いていった。

体から力が抜けていて、いつの間にか地面にへたりこんでいる。

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