シルバーブラッド 眠らぬ夜に
 どうして自分がこういう状況に置かれる羽目になったのか見当もつかない。

なのに男は、ナイフをゆっくりと動かして、その刃先を頬に這わせてくる。

お陰でサバイバルナイフの影が見えた。

目の端でその影を追っていると、じんわりと恐怖心が沸いてきた。

さっきまでは、怖さよりも驚きの方が大きかったのだ。

恐怖は滲み出るように浩之の中に生まれ出て、急速に膨らんだ。

心の中じゅうを、それは蝕んでゆく。

怖い、という気持ちに心の中を占められると、今度は、頭の中がゆっくりと緊急モードに切り替わっていくのを感じた。

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