シルバーブラッド 眠らぬ夜に
浩之は何も言わなかったけれど。

ビニールテープを途中でついだ結び目が、英樹が何かしたことを、物語っていた。

普段のこともあり、母上は、浩之が英樹に何かされたことを悟ったようだ。

死のうとしたことも、それが原因だと思ったようだった。


浩之は、今の現実である柴崎さんの方に向き直った。

彼女から目を離さないで、ゆっくりと立ち上がる。

「どうにかして、あなたの罪の意識を煽ろうとしたわ。

英樹のことを何度も訊いて、あなたのしたことをまざまざと思い出させようとした。

なのに、あなたは、私をあしらい続けて、挙句、平然と私の前に現れたわ」

それは、忘れていたから。

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