シルバーブラッド 眠らぬ夜に
それを確かめて、英樹に見えてるわけでもないのに、微笑んだ。

「十年もどこへ行ってたんだよ」
 
旧友に会ったような、懐かしい口調が、こぼれ出る。

「あの世に決まってるだろ。

おまえが殺したんだ」

英樹は、浩之の耳元で低くささやいた。
 
あの世?

心臓が、突き刺されたように鋭く痛んだ。
 
罪の意識に貫かれた訳ではなかった。
 
記憶が蘇っても、そんなものは微塵も感じなかった。

ただ、あの世へ送りそこなったことが、後悔となって激しく浩之を襲ったのだ。
 
生きていた、なんて。
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