シルバーブラッド 眠らぬ夜に
赤いものに惹かれていたんじゃない。

自分の痛みと同じ、その色から、逃げられなかっただけだ。

英樹は、今度は楽しそうに、声を上げて笑った。

浩之は今まで、

ずっと英樹の得体の知れないコワサを恐れて避けて、

触れないように、

見ないようにしてきた。
 
でも、

その怖さの源の狂気を生々しく見せられると、

恐怖感が萎えていく気がした。
 
暗い深遠の底に秘めていたものは、

こんなもんだったのか。

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