シルバーブラッド 眠らぬ夜に
浩之の問いに、男は暗闇でも分かるほどにんまりと笑った。

 何をされるのかは考えなかった。

そんなことをしたら自分自身で恐怖心をあおるだけだ。

自分で作り上げた恐怖心に囚われて、余計な怖さを味わってしまう。

そんなのは自虐的行為でしかない。

こういうときは相手のやりたいようにやらせてやればいい。

自分はただ、その一瞬一瞬の痛みや苦痛だけに耐えていたらいい。

そのうちに、何らかの結果にたどり着く。

たとえば、血まみれで横たわる自分、とか。


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