シルバーブラッド 眠らぬ夜に
自分でも、本心の自分が、その場で感じていた恐怖心の大きさが分からなかったのだ。

浩之の体は、恐怖に、それを味わっている自分をバカにしたような反応で立ち向かう。

そういう習性が付いていた。

英樹のせいで。

アスファルトの上で、さっき落としたタバコがまだ火を持って燃えていた。

それを尻目に見ながら、這って、光の届く所まで来た。

 と、たらりと何かが頬を伝った。

無意識に指でなぞると、ぬるりとしていて驚いた。

見ると、指先が真っ赤に染まっていた。

 頬が切れている。

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