シルバーブラッド 眠らぬ夜に
家に帰らなくて済むのはありがたいけれど、帰らない。

のと、帰れない。

のは大違いだった。

さっきはしばらく戻りたくないと思った部屋だけれど、こうなると急に安住の地に思えてきた。

戻りたい。

とすれば手段は一つだ。

這って階段を上がるしかない。

 紙はポケットに突っ込んだ。

アスファルトに手をついて、ずるずると体をひきずってみた。

腰に力が入らないと、人間はこうも動けないものなのかと思った。


< 26 / 241 >

この作品をシェア

pagetop