シルバーブラッド 眠らぬ夜に
思い込みの中では、自分はもっと非力なヤツのはずだった。

華奢な体に、こんな力が眠っているなんて知らなかった。

いつの間にか、自分自身すら、この中性的な顔や肢体にだまされていたようだ。

 しかし、力の入らない下半身をひっさげて腕の力だけで這い上がるのはなかなかに大変そうだ。

 とりあえず、片方の手すりに両手でしがみついた。

首や頬が痛んできた。

ナイフの切り傷は後になって痛みを感じるのだ。

おまけに腕に力を入れたせいで、血まで噴き出す。

あふれ出した血が、頬から首筋をつーっと伝い落ちるのが気持ち悪い。

ポタッと、階段に血がしたたる。

部屋の前までしっかりと、痕跡を残してくれそうだ。

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