シルバーブラッド 眠らぬ夜に
くそっ。

まともに歩けるようになったら、拭きに来よう。

下半身を、ほとんど引きずるようにしながら、しかもなるべく音を立てずに階段を登った。

怪しい物音に気付いた他の住人が、ドアから姿を現わしませんように。

下手に顔なじみなだけに、血まみれの姿を、どう弁明していいか分からない。

ひやひやしながら二階まで登りつめ、コンクリートの床に、身を投げ出した。

体中から、何かの液体が噴き出している。

もう、血なのか汗なのかわからない。

束の間転がっていた後、体に力を入れて立ち上がってみた。

立てる。

ようやく部屋まで辿りついた。

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