シルバーブラッド 眠らぬ夜に
ドアの内側に逃げ込むと、とにかく汗と血でぐちゃぐちゃの服を脱ぎ捨てようとした。

 コートを脱ぎ、スーツの上着を脱ぎ、シャツに手をかけて、ふと思い出した。

さっきの紙。

ポケットから引っ張り出した。

さっきは真っ黒に見えたそれは、黒ではなく、真っ赤だった。

鮮やかな、赤。

浩之の意識は、一瞬その色に吸い込まれた。

それから、そこに書かれた白い文字を見つけた。

『あと四人 健闘を祈る。エイジュ』


 
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