シルバーブラッド 眠らぬ夜に
白いペンで、ペン習字の見本みたいな綺麗な字で書かれていた。

でも、意味不明だ。

 紙をぐしゅりと握りつぶして、ゴミ箱に向かって投げた。

 ゴミ箱は向こう向きに倒れていた。

きっちりとそこに収める気なんてなかった。

ただ、手元から排除したかっただけだった。

なのに、どういうかげんなのか、真っ赤な紙は、きちんとゴミ箱の中に吸い込まれた。

我ながら驚いて見ていると、電話が鳴り出した。

『浩之、いないの?』

 さっきより厳しい母上の声が部屋に響いた。

 もう勘弁してくれ。

 浩之は電話の線を、電話機から抜き取った。
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