シルバーブラッド 眠らぬ夜に
どうして英樹がこれだけ年上の彼女を持っていたのか、浩之にはよく分からなかった。

 ゆっくりと彼女の方に体を向け直す。

 彼女は、浩之の頬をじっと見ていた。

 そこと首筋には、うっすらと傷跡が残っている。

 出た血のわりに、傷は浅かったようで、傷口はすぐにふさがった。

傷を隠すためにでっかい絆創膏を貼り付けようかとも考えたが、かえって目立つ気がしてやめたのだ。

 今、柴崎さんの不審そうな眼差しが、そこに注がれている。

 それでも、彼女は、その傷のことに触れる気はないようだった。

 それよりも、自分の話を進めたいようだ。

 浩之は、話なんて全然聞いてなかった。

慌てて、何となく、頭に残っている断片を組み合わせてみる。

 確か英樹のことを喋っていたはずだ。

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