シルバーブラッド 眠らぬ夜に
暖房の効いたところから出てくると、寒さがこたえる。
チラリと振り返ると、ガラスの壁の向こうの明かりの中で、柴崎さんはまだ呆然と座ったままだった。
これで、もう彼女と関わらなくてすむ。
もしまた何かを求めてきても無視していいだけの理由は告げたと思う。
だから、今度からは、逃げてやろう。
今まで、彼女からはのらりくらりと逃げ回るだけだったけど、強引に合う段取りを付けられたことは浩之にとっていいことだったのかもしれない。
こんなことなら、もっと早く、会っておけば良かった。
浩之は、真っ直ぐ前を向き直して、歩き出した。