シルバーブラッド 眠らぬ夜に
 派手な青のセーターを着、不自然なャップを目深に被っていた。

 その男は、下をむいたまま近寄ってきたかと思うと、浩之に体当たりしてきた。

思わず、まともにくらってつんのめる。

『何だ?』

体勢を立て直そうとすると、相手が、何かを、振りかざして来るのがわかった。

思わず、両手をクロスさせて、身をかばう。
 
 衝撃があって、男の足音が遠ざかっていくのがわかった。

けれど、追いかけていくことに気は回らなかった。

 右の手のひらが熱いから。

見ると、手のひらの真ん中に何かがあった。

鈍く銀色に光る、メスのようなナイフが突き刺さっているのだ。



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