シルバーブラッド 眠らぬ夜に
いつもあいつは、浩之が健全に生きるための道を妨げてきたから。

 つまらない記憶が、トラウマ化して自分の中に生きていることに、苦笑した。

 英樹はここにはいないのに。

 右手を握り締めて、傷口をふさいだ。

 痛い。

 でも、他に流れ落ちる血を止める方法を思いつかなかった。

 そのまま、右手をコートの袖に引っ込めた。

何とかこれで自分の部屋まで傷を隠してたどり着けそうだ。
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