シルバーブラッド 眠らぬ夜に
何度か絆創膏を取り出して使っただけで、ほとんど手付かずのままだった。

こんなことに役に立つなんて。

もらったときには予期すらしなかった。

こういう風に、役に立つときが来るなんて。

小さな袋を引き破って脱脂綿を取り出し、右手につかんでいたタオルを離す。

すぐに血の色が手のひらいっぱいに広がる。

よく、次々と出てくるもんだ。

感心しながら脱脂綿を押し当てて、左手で包帯を巻きつけた。

明日、会社でなんて言おう。

料理していて手をぶっ刺しました。か?利き手を刺すなんて器用な真似、誰が出来るんだ?

しかも、昨日顔の傷を弁解したばかりだ。


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