シルバーブラッド 眠らぬ夜に
「おはようございます」

 言うなり、

「どうしたの?」

と反応された。

営業所一、声のデカい薫先輩のお陰で、そこにいた全員の視線が集まった。

 いつも通り遅刻気味に来たせいで、営業所のほぼ全員がそこにいた。

「昨日、道でめいっぱいコケました。

しかも運の悪いことに、そこに切れ味のよさそうな石なんかが落ちてまして。

まともにぐさっと」

 痛い系の話が駄目な桐田さんが、とっさに耳をふさいだ。

 いや、もう遅いから。

全部言っちゃったし。

 心の中で突っ込んだ。

「そうか。これが女癖の悪い牧野あたりなら、女に刺されたかって疑いもするけど、切山じゃねえ」

 どういう訳か、浩之のここでの評判は、いい、のだ。

 真面目でいい子だと思われている。

 まあ違わないけど。

 
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